2015年から毎回参加を続けている野辺山ウルトラマラソン。
僕の初ウルトラの大会で、最愛の大会だ。
まるでルパンが何回も不二子ちゃんにひどい目に合わされても「ふ~じこちゃ~ん」となるように、僕に取って野辺山ウルトラマラソンはそんな不二子ちゃんな存在だ。
のっけから意味のわからないことを書いてしまったが、そういうことだ(どういうことだよ)。
どんな目に合うのかはわからない。
ただ、好きだから参加する。その後はその時の僕に聞いてくれ。
走っている時に起こるであろうトラブルは色々経験してきたし、想定もしてきた。
しかし、不二子ちゃん・・・じゃなくて野辺山は僕の想定をさらに上回り、会場入りから波乱を起こしてきた。
濃霧。何の隠喩なのか。
夜の10時に家を出発し、中央道をかっ飛ばし野辺山へ向かう。
途中、清里のコンビニに寄った時にいつもと違うことが今日起こることを直感した。
車から出ると、「あれ?全然寒くない。しかもすごいガスってる」
奥さんが「これは、昼ヤバいよ。暑くなるね。」と言う。
いや、君は暑さにも強いし、ちょっと原理の外側にいるような人だからいいけどワイは暑さに弱いんですよ。ほら、2017年灼熱の野辺山の時は吐きまくってリタイアしたし。
そんな一抹の不安を胸に、野辺山高原へ車を走らせていくと、どんどん霧が濃くなってくる。
映画の「首都消失」じゃあるまいし、マジで前が見えねえ!!
ナニコレ。
野辺山ウルトラマラソンからのメッセージか何かですか?
「ふふふ・・・こばすけ君よ、今日は何が起こるかな。まさに予測不可能。見通しなんて立てさせない。」
そんなやつですか。
何が起こるか、そんなことがわかっていたら面白くないんじゃ。
起こったことに対応していくのが、ウルトラの、いや、人生の醍醐味なんじゃ。
そんなことをハッタリ100%で思いながら、会場入り。
決戦、ついに始まる
出すもの出して、補給食などをポケットやザックに配置し、ペース表の補給計画等確認しているとあっと言う間に第一ウェーブがスタート。
第二ウェーブはその15分後、今回はスタート時の挨拶がなんとも癖強めの僕好みの感じでほのぼの。
ほのぼのした挨拶や素朴な感じの大会の雰囲気、応援の方やエイドの方の温かい感じ。
そんな野辺山ウルトラマラソンが大好きだ。
しかし、野辺山は温かいだけではない。
坂しかないと言っても過言ではないコース。
海抜0m地域に住んでいる僕を容赦なく襲う準高地の気圧。
標高のアップダウンに加えて、朝と昼の激しい温度変化。しかも今日は間違いなく暑くなる。
前半のダート。後半の馬越峠。90km過ぎのだらだら登り。
挙げだしたらキリがないくらいの、僕を追い込む仕掛けがコース上で手ぐすね引いて待っている。
「今日も状況によっては、ギリギリの勝負になるだろうけどここに必ず帰ってくる」
そんなことを思っていたら、あっと言う間にスタート10秒前。
ついに、野辺山ウルトラマラソンがスタート。
奥さんと健闘を誓いあい、走り出しました。
チャレンジ富士五湖の熱戦と奇跡の代償
スタートして5km位は、比較的フラットなコースですが標高が高いので普段のようにガンガン行くとえらいことになることもあるので呼吸の感じに集中して荒れてきたらペースダウンするということを念頭に走っていきます。
この日は暑くなるという予報もあったので、可能な限り早く北相木の折り返しと滝見の湯の辺りまでの日照りゾーンを抜けたい所。
なので、呼吸が荒れない程度に速く走って、どんどん前へ行くようにしていきます。
今回、「幻想を捨てろ」という記事や他の記事でも書いてきましたが、先月のチャレンジ富士五湖5LAKESの奇跡の完走から体の疲労が上手くとれず、どうにもこうにも野辺山に向けて不安が拭えない日々を送っておりました。
結局の所、万全なんてないという結論に達してその時の自分のベストで勝負していくしかないよねと思ってスタートラインに立ちましたが、それでも拭いきれない不安。
その不安は2つありました。
ひとつは、20km以上走ると臀部から張りが出てくること。
もうひとつは、喘息の症状が出て、若干胸が詰まったような感じがあること。
20km以上走ると張りが出る方は、もうそういうものと思っていくしかない。疲労が抜けていないのだから当たり前っていう感じだ。
喘息の症状が困ったもので、胸が詰まったような感じだと「呼吸が荒れないペース」が普段より遅くなってしまう点でした。登り坂でも普段より呼吸は荒れやすい。
普段でも喘息の症状は低気圧、疲労、その他で出ることがあるので、付き合い方はわかっているし、今日も上手く付き合うしかない。
喘息の症状も富士五湖後からしつこく症状が消えなかったので、やっぱり富士五湖の代償は大きいよなぁと思いますが、それも僕の個性。上手く折り合いをつけていくしかない。
10kmを過ぎてダートに入ると、斜度もぐっと上がってきて呼吸の荒れを感じます。
ペースを抑えて、それでも呼吸が乱れる時は歩きを入れて、確実に進んでいきます。
標高が高いのに加えて、喘息の症状もあってどうも呼吸が荒れやすいなという感じ。
下り坂では心肺機能ほぼ使わないので、そこで攻めるしかない。状況によっては、登りを完全に捨てて歩いて、下りで攻めまくるとか大胆に割り切った作戦も必要になるよなぁと思いながら進んでいくとあっと言う間にコース最高点。
去年より最高点に到着するタイムは遅いのに、発汗量がすごい。
そして、きれいすぎる青空。
木々の間から差し込む日差しの強さ。
景色は最高すぎるけど、これは間違いなく気温が上がるパターンだ。
2017年にDNFに追い込まれた、灼熱の野辺山になるに違いない。
コース最高点を通過した後は、23kmの第一関門の林道ゲートまで下り坂。下り坂で心肺を休ませながら快調に進み、第一関門に到着。
不安要素はあれど、順調な滑り出し。
ひとつ、うれしい想定外があって、事前に公開されていたエイドステーションの情報だと果物が少ない印象でだったので多めに補給食を用意してきましたが(小麦アレルギーがあるのでエイドで果物以外の食品は食べないようにしています)、林道ゲートのエイドにも、この先の様々なエイドステーションにも果物やトマト等用意されていて、本当にうれしかったです。
不安要素もあるけど、果物が置いていないと事前には出ていた林道ゲートのエイドで果物にありつけた。
そうだそうだ。
「想定外」は悪い事ばかりではない。良い事の「想定外」もあるんだ。
「さ、行きますか」
ボソッとつぶやいて、林道ゲートを後にしました。
腹をくくれ。それをしに来たんだ。
林道ゲートを出た後も基本的には下り基調。
うれしい想定外もあったけど、やっぱり今日は呼吸が荒れやすい。だからペースがどうにも上げられない。無理に上げることは出来ても、まだ道のりは長いし慌てるような時間でもない。
日差しはどんどん強くなってきている。発汗量も多い。
稲子湯に到着する数km前で奥さんに追いつかれ、一言二言話してあっという間に奥さんは先行。
後から聞いた話だと僕のペースが去年より遅い事や暑いことから、大丈夫か心配していたようです。へぼい旦那でごめんよ・・・(泣)
しかも去年は90km過ぎで追いつかれたのに、今年は早く追いついたもんだから余計に心配したそうですが、うちの奥さんの走力はヤバいので・・・富士五湖118kmもあと少しで13時間切りそうだったし。
この後奥さんとは、50kmまではエイドで会いますが、その後は完全に先行。北相木の折り返しでエール交換したのを最後にぶっちぎっていきました(すごい・・・)
先行する奥さんを見送り、自分の状況を見ていると苦手な高温、呼吸も荒れやすい、そして脚の張りも約束通り20km過ぎから少しづつ出てきている。
でも、野辺山直前はかなり休養したので、張りが出るタイミングは遅くなり、張りの出方も弱い。
まだ、大丈夫だ。
・・・でも、でも、間違いなくキツくなる。
気温も間違いなく上がってくる。てゆーかもう暑いし。
そんなことを思いながら稲子湯エイドの手前まで来ると、応援の方が大勢いて、とても元気と勇気を頂きました。
応援の方に手を振ったり、返事すると元気になる。
・・・そうだ。
脚がいてえとか、苦しいとか、暑いとか、寒いとか、気持ち悪いとか、ベストじゃないとか、そんなことは全て100kmも走れば当たり前に起こること。
僕ごときが自分の力ひとつで100km走れるなんて思っちゃいけない。
色んな人に背中を押してもらったり、景色とかに励まされてどうにかこうにかゴールにたどり着く。
それが僕のウルトラであり、僕がウルトラを好きになった理由だ。
色々起こるであろうトラブルを応援や景色とかに背中を押してもらいつつ、どうにかこうにか進んでいく。
そうだ。それをしにここまで来たんだ。
気持ちも攻めに転じてきて、稲子湯を出た後の急登の後は僕の大好物の下り坂だ。
攻めだ。攻めの時が来た。
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