折り返しエリアを抜けて滝見の湯へ向けて進んで行きますが、ここからはずっと登り基調のエリア。
ここは毎回とても苦しめられる所で、ここまでは絶対に時間を稼ぐ!と折り返しゾーンまで走ってきました。
僕ごときが走力が遥かに上の奥さんを心配するなんておこがましいんだけど、スライドゾーンで見たあんなしんどそうな様子だと心配だ。
心配だけど、どんな状況でもゴールまで帰ってくるのがうちの奥さん。
僕のように弱っちいメンタルではない。
今は、自分のことに集中だ。
なんせもう、僕もそこそこ、いやかなり!?疲れている(笑)
ついにこの辺から少しずつ少しづつ弱気?もしくはセンチな自分が顔を出してきます。
野辺山で敗退した数年前のこと
3回目の野辺山ウルトラマラソンで、熱中症ぽくなり吐きまくりリタイアした時、この辺ではマジで地獄を味わいました。
それがウルトラマラソンで初めてのリタイアでした。
いや、悔しかった。次の年は入れ込みまくってリベンジしたけど、体調がむちゃくちゃ悪く後日検査したら貧血でした。
気軽に始めたランニングだったのに入れ込んでフルマラソンに挑戦したり、ウルトラマラソンに挑戦したりしている自分が信じられない。
でもこういう風に悔しいとか嬉しいとか、心が動くような日々が過ごせることは本当に幸せだし、そういう気持ちにしてくれるランニングには本当に感謝だよなぁ。
段々気温も上がり、斜度も上がり、疲労もさすがに積み上がり、走ったり歩いたりを繰り返しながら進んで行きます。
今回、滝見の湯エイドはなく、なんかがらーんとした滝見の湯が寂しい気がしました。
初めて野辺山にチャレンジした時は、この滝見の湯で「よっしゃ馬越いくぞっ!!」って気合いいれて叫んだんだよな・・・・。
馬越峠の入り口付近のお墓みたいな所は前述したリタイアを決断した所。
そこもスッと通過。あの時の自分より少しは強くはなっているのかなぁ。
なんかこの辺は周囲が静かなのと周りにランナーも少なかったことから、内面に意識が行く時間が多かったように感じます。
なんだなんだこのしんみり感は。情緒不安定か俺!?糖質足りてるのか?
なんか弱気になっている気がしたので、「よっしゃ!!」と声出してジェル飲んで自分に喝を入れて歩を進めていきます。
さぁ、馬越峠。
エイドで水をもらって、マイボトルにも水を入れて、ザックから持参の芋けんぴとチョコフレークを出していざ、ハイキング。
馬越峠の登りは早歩きで補給しながら糖質をチャージしつつてっぺんまで行って、てっぺんからは覚悟を決めて重力任せで千曲川まで一気に下る。
ここの作戦はこれ一択。下りこそ僕の生きる道。
今の脚で下りを攻めて、脚は残っているのかい?
なんか冷静な突っ込みが来たが、それは知らない。
先の事は知らんが、自分の武器は使える所でしっかり使ってゴールへ近づく。
そんなことを胸に静かな馬越峠に僕の芋けんぴをボリボリ齧る音が響きます・・・・。
この馬越峠の静かさ、大好きです。
ウルトラマラソンを走っていると、その時に食べるものも見る景色も大袈裟ですが千倍増しで美味しいしきれいに見える気がするんですよね。
こんな景色と、芋けんぴに舌鼓を打ちながら、めちゃくちゃキツいんだけどニコニコしつつ登っていきます。
坂を下りつつ応援してくれる方や、頂上で「ここ頂上ですよ~!!」と応援してくれる方もいたり、本当この応援のおかげで何度背中を押されたか。
そんなで馬越峠頂上到着。
やったぜ。
あんなに食べながら登ったけどエイドのものも少し頂いて、椅子に少し座って残り21kmの展望と作戦を確認。
作戦は一択。
「下り、ガンガン行こうぜ!!」
85km位まではもうずーっと下り、ここに全てをつぎ込む!
今まで歩いていたスピードとは打って変わって爽快なスピードで下っていくけど、午前中に八峰の湯目がけて走っていたようなスピードではないし、なんか脚がギシギシして一歩一歩大腿四頭筋もメリメリしているけどここが勝負所。
ここでアクセルを踏み込まなくては。
我妻善逸の如く、下りを極め抜くしかない。
泣いてもいい 逃げてもいい ただ諦めるな
信じるんだ 地獄のような鍛錬に耐えた日々を
お前は必ず報われる
極限まで叩き上げ
誰よりも強靭な
刃になれ!!
「鬼滅の刃」より引用
この「諦めるな」にぐっときます。
諦めなければ、どうにかなる。
スピードが上がったことで風を感じます。
攻めの終わり、粘りの始まり
そしてついに85km地点に到着、いつも夕暮れ時に来ていた千曲川ですが今日はまだ太陽が高い位置にある。
下りが終わり、フラットになった瞬間ズン!!と来て一気に脚が重くなりました。
ついに、体中の警告灯がピカピカ光り始めます。
「残りエネルギー、10%切りました!」
「脚部破損!脚部破損!基地(自宅)への帰還すら困難になります!!」
「腹部にも異常発生!!!」
なんかこの時呑気に色々妄想していたけど、とにかく限界が近づいているようだ。
きれいな千曲川を眺めながら、這うように進んで行き最終関門の川上村原公民館に到着。
水を被り、補給をし、最後の戦いに向けて気持ちを再度作る。
エイドを出て、すぐの信号で止まっている時にもう汗とかでグシャグシャになったペース表に目を落とす。
そこには数日前の僕が、今この瞬間の僕に宛てたメッセージが書いてあった。
「ラスト13km、粘り倒せ」
2022年野辺山ウルトラマラソン 最終話「驚愕、苦悶、葛藤、安堵、感謝、歓喜」に続く。
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