精進湖の周回を終えて、いよいよゴールへ向かう帰り道に差し掛かる分岐に到達しようとしていた。
ゴールまでは30kmを切った。
ここまで、過去最高速度で進んできている。
でも、体の状態はなかなかにダメージを受けており、それよりも深刻なのが「そんなに攻めなくても完走出来れば良くね?」という第二の自分の声。このメンタルの小さなヒビが、大きな割れを招く。
伊達に何度もウルトラマラソンで精神崩壊を起こしてはいない。
このヒビを許してはいけないのはわかっている。
今は小さなこのヒビが、とんでもない崩壊を招く。
でも、このヒビを修復する術を僕はあまり知らない。
知っているとすれば、完全に昭和ノリの「気合い・根性」。これ一択。
これしかねえのか・・・・。
前後に人がいないことを確認して、「うおおおおおお!!!!やるぞ!!!!ぜってえ負けねえええ!!!」とか叫ぶしかねえのか。
そんな時、あの看板が僕を救ってくれた。
ようやくわかった自分の本音

・・・・精進湖を抜けて、例の看板を目にした時、明らかに何かのスイッチが入った気がした。
これまで5LAKESに挑戦していた時は「心から左に行きたい」と言いつつ右へ行ってきたが、今回、僕は左へ行く。
我ながら面倒臭い人間だなと思うが「なんで俺は左なんだ」と思った。
エントリーしたのは、他でもない自分なのに。
そして、そう思う数分前には、少し攻めの姿勢を忘れて、気持ち的に置きに行くような感じになってしまっていた自分に猛烈に腹が立った。
B‘zの「RED」じゃないけど「ここで全て出し切るとあらためて誓おう」というような気持ちになった。
『2026年チャレンジ富士五湖ウルトラマラソン4LAKESの部振り返り 第一話「春の珍事」』より引用
話は第一話の冒頭に戻るんだけど、この引用の通り、それまで妥協して置きにいこうとしていた自分に無性に腹が立った。
自分で決めたことを守れない。
「自分のその日イケるペースで押していく」は、「置きに行く」では断じてない。
決めたことを守れない。自分との約束も守れない。
こんななのに「なんで俺は左なんだ」じゃねーよ。そんな奴が5LAKES完走出来る訳ねーだろと。
ここに来て、ようやく本心がわかった。
5LAKESに挑戦する怖さ、敗退する悔しさ、そして完走出来た嬉しさ、全部知ってしまっている。
5LAKESは今の僕にとって、最高峰の挑戦だったんだ。
俺は、5LAKESに挑戦したかったんだ・・・・。
5LAKESに挑戦したい、なんて言うことはいくらでも出来る。
5LAKESをもう一度完走するには、自分を叩き上げないとダメだ。
まさに今、こういうキツい時に楽な方へ流れている限り、完走なんて出来ない。
だとしたら、今、ここでやり切るしかねえ。
やり切れれば、タイムはついてくる!
自分の本音にようやく気付いた瞬間、置きにいこうなんて気持ちは吹き飛んだ。

精進湖民宿村旧入口エイドを出て、いざ西湖へ。
もう第二の自分の声は一切聞こえなくなった。
自分からは、絶対に逃げられない
何かのスイッチが入ったのか、これまで復路の赤池大橋~西湖の所なんてろくに走れたことがなかったのに、そこもゆっくりペースではあるが走り抜けていく。
写真を撮るのも忘れる位、集中して走っていた。
西湖公民館へ向かう道中で、シューズの中に入った石が無視出来ないレベルで気になり始めた為、コース脇の石に座ってシューズを脱いで取り除く。
シューズを履きなおして立ち上がったら、結構フラフラでヘロヘロなことに気付いたけど、そんなのは止まる理由にはならない。

西湖公民館の先の私設エイドで冷たいコーラを頂き、あまりの美味しさにテンション爆上がり。
私設エイドの方々にも本当に感謝。助けてもらってばかりや・・・。

湖畔沿いの道をヨタヨタ走りながら、ふと思う。
それは、自分からは逃れることは出来ないなということ。
どんなに周りから称賛されても、自分が納得していなければ心から喜ぶことなんて出来ない。
自分を一番見ているのは、自分だ。
自分は、少しの妥協も手抜きも許してくれない。見逃してくれない。
周りから何を言われても、自分が納得していればビクともしない。
そんな第二、いや、第二はネガティブこばすけだから、第三の自分か。
そんな自分が、5LAKESに挑戦したがっていることがわかってしまった。
これまでもやると決めたことは、成功するかどうかは別としてどんなに回り道してでもやってきた。回り道の道中で自分に負けることも多々あったけど、何度でも出来る限りチャレンジは続けてきた。
どんなに取り繕っても、
見栄えを良くしても、
たとえハリボテで周囲から称賛されたとしても、
そんなので自分は誤魔化せない。
なんかそういう「俺はいいけど、YAZAWAは何ていうかな」的な「俺はいいけど、KOBASUKEは何ていうかな」的な自分もいるし、弱くて怠惰なネガティブこばすけもいる。
今回は、こういう面倒臭い自分を見つめることが出来た面白い日になった。
少し入れ込んで走り過ぎて、補給がおろそかになっていたのか、お腹がグーグー鳴っている。
ハンガーノックはイカン。最後まで飲む・食べる。これ大事。
ちょうど湖畔沿いの道終わりの分岐の所に自動販売機があったので、そこで翼を授かる。

レッドブルを飲みつつゆったりと走り、足和田出張所へ向かう。
もう脚は結構な状態だ。ハムストリングスがビクビクしている。
でもまだメンタルはイケる感じ。これが一番大事。
足和田出張所エイドで水を被り、2分だけ休んで、エイドを出る。
時間を決めて休めるようになっただけでも、10年前とかエイドでダラダラと10分とか休んでたから大きな進歩なんだろうけど、これも数年かけてもう少し短い休みで済むように鍛えていきたいなぁ。
そんなことを思いつつ、足和田出張所エイドを後にする。
ゴールまであと15km。
船津へ向かう市街地の地味だけとキツい登り基調、そしてラスボス船津の坂との最後の戦いが始まる・・・。
2026年チャレンジ富士五湖ウルトラマラソン4LAKESの部振り返り 最終話「明日に向かって走れ」に続く。

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