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2023年野辺山ウルトラマラソン 最終話「幸せすぎるゴール」

野辺山ウルトラマラソン
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前半戦から感じた4月のチャレンジ富士五湖の熱戦の代償。

中盤戦の暑さの猛攻、長い長い自己問答。

野辺山最大の難関と言われている、馬越峠。

これらを乗り越えて、ここまでやってきた。

ウルトラマラソンを走っている時には、たったひとつの「ゴールする」という思いに対して、数百を超えるような止める理由が山のように出てくる。その多くの止める理由を「ゴールする」というひとつの思いだけで乗り越えられるのか。

乗り越えられる人もいるかもしれないが、僕はおそらく厳しいだろう。

僕はそんなに、強くない。

ここまで、多くの応援の方に背中を押してもらった。

エイドステーションの方との会話に元気を頂いた。

抜きざま、すれ違いざまに、声を掛けてくれた共にゴールを目指すランナーさん。

大好きな野辺山の雄大な景色。

これらに元気を頂いて、背中を押してもらってここまでこれた。

川上村原公民館エイドを出て、信号待ちの時に、ふと考える。

自分が、走るのを好きな理由は何なんだろう。

これは、ここ数年よく考えることで、未だに答えが出ない。

もしかしたら、走っている中で出会う人や自然が好きなのかもしれない。

野辺山に何回も出ているうちに、沿道で応援してくださる方で見覚えのある方が何人もいることに気づいた。きっと毎回応援に来てくださっているのだろう。

見覚えのある方も、そうでない方も、お互い名前も知らないし、話したこともなく、会ったこともない僕に向かって応援をくださっている。

これって、結構すごくて、ありがたいことだよなぁって思う。

普段走っているコースでもそう。

通勤ランですれ違うおじさんは、僕が自転車で通勤していると「なんだ疲れてるのか」と心配して声を掛けてくださる。

休日に走る海岸のサイクリングロードでいつもすれ違うランナーと会話をすることはないが、手を上げて挨拶をする。

なんかそういう、ほんの一瞬の人との関わりや、走る中で感じる自然や空気感が好きで、それを感じたくて走っているのかもしれない。

まだよくわからない僕の走る理由。

わからなくて良いのかもしれない。ただ好きってだけでいいじゃないか。

信号が変わり、誘導の方が「あと少し!がんばって!!」と声かけしてくださる。

「ありがとうございます!!ゴールしてきます!!」

・・・・僕のラスト13kmが始まった。

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真のラスボス、登場

川上村原公民館を出て、90km地点までは比較的フラットな道のり。

ここはどうにか走っていきたい所。

と、いうのも90kmからは、こんなやつが待ち構えているからです。

バラモスの後のゾーマ。

エクスデスの後のネオエクスデス。

例えがアレで、よくわからなくなってしまったけど、つまりはここからが「シン・ノベヤマ」。

90km手前のハッピードリンクショップで綾鷹を買い、ぐびぐび飲みながら90kmの計測マットを踏み、ここから先の登り坂っぷりを見てニヤニヤする。

僕が初めて野辺山に出た2015年。

事前に得ていた情報で「馬越峠を越えればほぼ完走出来る」と聞いていて、ヨレヨレの状態でこの90kmの坂を見た時に「なんじゃこりゃ・・・・聞いてないよ・・・・」と戦慄したのを覚えています。どうにかこうにか制限時間3分前にゴールに飛び込めましたが、本当にあの時ここで、この坂を見た時は絶望しました。

その時に、事前に情報を集めるのはいいけど、結局の所ゴールするまでは何が起こるかわからないという事と、伝聞と実際に自分が見て体験することは全く持って別物であるという事を教訓として学びました。

あの時の僕は「馬越峠を越えればゴール」と極端に馬越峠に意識がいってしまっていた。

今回、さすがに7回目なので、そんな衝撃を受けることはない。

だけど、最後の最後まで、気を抜くことは出来ない。

何が起こるかわからない。

最後まで、ゴールするまで、しっかり強く気を持って進んでいくのだ・・・・。

こんなことを思いつつも、のんびり綾鷹を飲みながら歩き。

糖質を一日中ぶち込まれ、疲れた胃には緑茶か水が美味しい。糖質で酸性化した胃の中がお茶で少し中和されるか希釈されて酸性度が下がるからとかなのだろうか。それとも単なる味変効果なのか。

綾鷹のペットボトルをザックにしまい、ヨタヨタと走り出す。

登り坂が終わる頃には、ついにあのゾーンがやってきた。

ひたすら、ひたむきに

恐怖の電柱ゾーン。どうにか走って、歩いて、電柱一本毎に走りと歩きを切り替える。

少し下り勾配の所は、ゆっくりでも良いので走り続ける。

時々横を通り過ぎる自動車から「あと少し!!がんばれー!!」と熱烈な声援を頂く。

「ありがとう!!」と手を振る。

ヨレヨレの僕には、本当にこの応援がありがたい。

93kmを過ぎた頃、奥さんから驚愕のLINEが。

「ゴールしたよ!!もしかしたら入賞かもしれないらしい」

うお!!すげええええええ!!!

ロードのウルトラで入賞は初めてじゃん。

表彰式!表彰式!!見たい!!

あと7km!!キロ5で走れば、35分。いやいや、ハーフマラソンで平均4:08/kmで去年走れたからそれで行けば29分で行ける・・・・!!

ハムストリングスとケツ「あ、それ今無理なんで。93km走っているんで。マジ勘弁してもらっていいっすか」

僕が一瞬思ったことを抗議するが如く、ハムストリングスとケツがメリメリと疲労をアピールしてくる。

ついでにお腹もグーグーと音を立て始めました。

・・・・ぐぬぬ・・・わかった。93km地点での状況を考慮した妥当なペースで行こうではないか。

奥さんに「おめでとう!!ワイは93km。待たせてすまん!!」とLINEしつつジェルを飲む。

それにしてもすごいな。強い。本当に強い。

僕も僕でしっかりゴールしようと思った頃に、95km地点に到着。

長かった100kmの道のりも、ついに残り距離のカウントダウンに入った瞬間でした。

ウルトラが、走ることが好きだ

ついに、ついにここまで来た。

不思議なもので、ラスト5kmを切ってからは元気が出てくる。

ラスト3kmは会場のアナウンスを聞きながらぐるりと遠回りするコース。

最終エイドの方に「今日も一日お世話になりました!!」と挨拶してラスト3kmに入る。

今日は本当に中盤戦がキツかった。

暑くて本当に危なかった。ここまで来れたことが信じられない。

ある意味、2017年の灼熱の野辺山でリタイアしたリベンジを果たしたような気分だ。

当時と比べて、様々なトラブルに対する対処力が上がってきたのかもしれない。

2017年にここでDNFしてからの様々な大会で死線を超えてきた経験が、僕を少しづつ鍛えてくれていたのかもしれない。

今日も色々あったけど、本当に楽しい一日だった。

ヨレヨレになって、心身共に追い込まれないと見ることが出来ない、どうしようもないネガティブな自分に会えるのも面白い。

その中で、どうにか活路を見出していこうとするのも楽しい。

エイドステーションで飲み食いするものが、普段の2倍増しで美味しいのも楽しい。

応援の方やエイドステーションの方、ランナーさんとのほんのわずかな会話が楽しい。

目線を上げた時に飛び込んでくる絶景が楽しい。

こうやって、すべてが美化されて、僕はまたウルトラマラソンに挑戦するのだろう。

あと1kmを過ぎて、一度は聞こえにくくなったゴール会場のアナウンスがまた聞こえるようになってきた。

いよいよ、ゴールだ。

応援が「がんばれ!」から「おかえり!!」に変わる。

もう何度もウルトラでゴールしているはずなんだけど、「おかえり!!」とこれだけ言われると照れるし、涙腺が危なくなる。

僕も一日でこれだけの回数「ありがとう!!」と言うことはない気がする。

本当に、感謝だなぁ・・・・

ついに、僕が世界で一番大好きなエネオスが見えてきた。

あそこを曲がったら、ゴールが見える。

曲がる寸前の所に、本日入賞のうちの奥さんが手を振って待っている。

奥さん「おかえりー!!よく来たね!!ナイス!!」

僕「いやいや!!入賞すげーわ!!ゴールしてきます!!ありがとう!!」

ゴールへ向かって走る。

一日色々なポイントで応援してくれていた男性の方が視界に入る。

この方、毎年応援してくれているんだよな・・・

走りながら、「今日、いろんな所で応援してくださり、ありがとう!!」とその方にもお礼を伝える。

なんかもう、声かけてくれたすべての人にありがとう。

「神奈川県からお越しのこばすけさん、ゴールです!!おめでとうございます」とアナウンスされる。

なんかすげーありがたいぞ。

ありがたかったり、うれしかったり、、、、色々な感情にまみれての幸せなゴールでした。

「よっしゃーっ!!ありがとうございましたっ!!」

・・・本当に楽しかった。キツかったけど。

でも、これだけキツいから、楽しいんだよな、多分。

最高の充実感と強烈な疲労をおみやげに、帰路につくのでありました・・・。

道中声を掛けてくださったランナーさん、応援の方、エイドの方、大会に関わったすべての皆様・・・ありがとうございました。

大好きな野辺山駅。

2023年野辺山ウルトラマラソン 最終話「幸せすぎるゴール」完

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