オクム参加6回目にして、初めて20kmを2時間切って入り、快調に23kmの鎌北湖エイドで補給。
ここまでも十分に登りはあったけれど、ここからがオクムが本領発揮するパート。
毎回、ここの登りでかなり体力を持っていかれ、長い時間歩いてしまい、大量の時間を要してしまうパート。
ここの登りを攻略しなくては・・・・。
これは毎年思う事。
別に「全て走って登り切ろう」などと思っている訳ではない。
少しづつ、走っている時間を増やしていきたい。
それを数年繰り返していれば、気が付いたらかなり走っている時間も増えるだろう。
こんなことを思いながら、清流エイドに向けて坂を登り始めました。
登り坂と僕の戦いの歴史
僕とウルトラマラソンの坂対決は数多くありました。
いや、「ありました」という過去形ではなく、今現在も続いております。
チャレンジ富士五湖の足和田出張所からの西湖へ向かう坂、ラストの船津の坂。
野辺山ウルトラマラソンの、そこらじゅうにある坂、馬越峠。
なくなってしまったけれど、日光ウルトラマラソンのいろは坂。
そして、今対峙しているオクムの坂。
気が付いたら「坂バカかよ」という大会ばかり出ている。
走れるかどうかは別として、アップダウンのある大会が好きだ。
これらの坂達と、2015年から戦いを続けている。
ウルトラマラソンに参加を始めた当初は、ほぼ全歩きで登り坂を突破し、下りで少しでも時間を稼ぐというスタイルで走り、エイドでは中盤から後半は必ず座り、休憩を入れながらどうにかこうにか完走にこぎ着けていたスタイルでした。
そのスタイルが数年続き、だいぶウルトラにも慣れてきた2022年野辺山ウルトラマラソンで初めて12時間台でゴール出来、この時はエイドで座る時間もかなり少なくなり、登りも走れる時間が少しではあるけど増えてきた。
その流れで2023年もチャレンジ富士五湖、野辺山と走ってきて、今日のオクムは「登り坂を走る時間を増やしたい」そんな思いで挑んでおりました。
そんな思いをいきなりブチ折ろうと、清流エイドへ向かう坂道はいきなり強烈。
「先手必勝」とばかりに強烈な斜度の坂を繰り出してくる。
何度も通っている道なので、知ってるはずなのに毎回坂を見て「おお・・・やべーなこの坂は!」と思います。
呼吸がゼーハーならない範疇のスピードでゆっくりゆっくり走って登っていきます。
歩きが速い人に抜かれてしまう自分のカメっぷりに悲しくなりましたが、人は人。
あ、あとカメは意外と素早いです。我が家のリクガメ達は素早いし、スタミナもすごいあるし驚かされます。
ちょっと脱線しましたが、そんな感じで登りを走る時間を増やしていき、呼吸が荒れてきたり脚の疲労感が臨界点を超えそうだったり、体温が上がりすぎているのを感知したら歩きに切り替えて、という感じで進んでいきました。
ここで歩くからダメなのかなぁと思う部分もありますが、これを折り返しの丸山エイドまで繰り返せば、例年よりもはるかに走っている時間は長くなるし、この感じを最後まで継続できるか。今だけがんばっても仕方ないのだ。継続。継続。これを数年粘り強く繰り返しているうちに登りをもっと走れるようになるだろう。
この辺だったか記憶が曖昧なのですが、応援に恐竜さんがいて驚きと元気を頂きました。
応援の方も色々なコスプレやすごい熱量で背中を押してくれている。
このオクムの雰囲気が好きだなあ・・・・坂はやべえけど。
そんな感じで進んでいき、ユガテエイドを過ぎた頃「ありがとう」と応援に応える聞きなれた声が後方から聞こえてきた。
!!
もう来たか、うちの奥さん。
すげーな。うちの奥さんはとにかく登りでも走る。ゆっくりではあるんだけど歩かない。仮に歩いたとしてもその歩きも速い。
「ユガテでノンアルコールビールもらったよー!!暑いねぇ!」
「なかなかキツくなってきたね!!」
などと言いながら、あっという間に先行・・・・w
なんなんだアレは。すごいぞ。ぐうの音も出ない。ギャフン。
奥さんをストーカーの如く視界に捉えながらどこまで粘れるか・・・というゲームを自分の中で思い付き粘りながら進んでいくも、奥さんの登りは速く、阿寺エイド以降は完全に先行され、その後はスライド区間ですれ違うのみで視界に捉えることは出来ませんでした・・・・。うーん。強い。
うちの奥さんは本当に粘り強い。ゴールするまで粘り通す強さがある。そういう強さを持っているランナーを見ると心から尊敬の念を持つ。
初めてフルマラソンに参加した2012年のちばアクアラインマラソンで、35km位のエイドでネガティブになって大の字になっている間に制限時間に引っかかった僕と違い、粘り通して5時間30分位でゴールしていた。
その後のウルトラマラソンでも、僕がメンタル崩壊起こしてDNFしている間もすべて完走してきている。
僕は、メンタル崩壊を起こして放り投げてしまう自分を強くしたいという気持ちがあります。
ランニングに限らず、僕にはそういう弱さがある。
長距離を走ると自分との対話が長くなってくる。
そうなると、嫌というほど自分の弱さを直視することになる。
弱い自分は心の中に住みついていて、追い出すことは出来ないので、そいつとどう上手くやっていくか?
という考えに変わってきたけど、結局弱い自分と上手くやるのも「強さ」が必要だ。
なんせ、口が達者なのだ。弱い自分は。弱い自分に負けるとすごく長い時間後悔に苛まれることはわかっているけど、強くありたいと願う自分を口説き落とすだけの口の達者さがある。
そいつと上手くやっていくこと、それこそが僕の死ぬまで続く心の鍛錬なのだろう。
粘り通す強さ、諦めない強さ、自分を信じる強さ、どれも自分が欲しくてたまらない力だ。
強さ・・・数字で測れないものほど、尊いものはない。
そんなことを思いつつ、奥さんも完全に視界から消えて、登りをなるべく走ろうとする意志とは裏腹に歩きが多く混ざってきて、少しづつ疲労の影が色濃くなってきておりました・・・。
最もキツかった時間帯に救世主現る
日陰のない所にいくと、自分の影がめちゃめちゃ濃い。
何の隠喩か、自分の心の中の影も疲労感と共に濃くなってくる。
キツい・・・
暑い・・・・
ケツとハムストリングスの張りが出てきたなぁ・・・・
前半の突っ込みのツケが来たのだろうか。
前半突っ込んだツケが分利30%位のとんでもない利率で、しかも複利が効いて雪だるま式に疲労が膨らんでくる。
やばいなぁ・・・完全に突っ込んだツケを取り立てられている。
前話のラストで脳内に登場した妓夫太郎は、しっかりと取り立てに来たなぁ・・・。
昼間は鬼は活動しないんじゃないんか、オイ!
僕の脳内妄想だから、昼も夜もないってか。
あかんあかん。理性を保て。少しでいいから走るんだ。
登りを攻略するんだ。このオクムの登りを少しでも多く走って、これまでの強敵達、チャレンジ富士五湖の船津の坂、野辺山の馬越峠、ラスト10kmをもっと走れる自分になるんだ。
「歩くな」なんて言ってない。歩いてもいいから走る量を以前の自分より増やすのだ。
今日のテーマは「楽しんで走りつつ、登り坂を攻略せよ」だ。
負けるな。歩き倒すな。少しでいいから走って、弱い自分に対して小さな勝利を積み上げるのだ。
粘って粘って、走って歩いて、もうすぐ見晴台エイドだよな・・という頃に、上の方から「ブラボー!ブラボー!!」と声が聞こえてきた・・・!
この声・・・聞き覚えがあるぞ!
いつも見晴台エイドにいる方や!!
我が家で「ブラボーさん」と呼んでいるこのお方。オクムでは僕ら夫婦のヒーロー。人違いでなければこの方はいつかのひらつか12時間個人で2~3回奥さんと壮絶な競り合いをしていたランナーさんのサポートをしていた方だと思う。
毎回ブラボーさんがサポートしている方が奥さんより多く走り(この方マジで強かった)、奥さんは3位ということが多かった。ちなみに僕は眠気で蛇行しながらベンチで寝たり、眠気を覚ますために裸足ランをして一人で「いてっ!石踏み抜いた!!」などと騒ぎながらグダグダな夜を過ごしておりましたw
そんな感じで、お話したこともないのに勝手に縁を感じている「ブラボーさん」がいる見晴台エイドでブラボーさんの声かけを受けたら、キツいけど、笑っていくしかねえとすっごく元気になりました。
見晴台エイドで果物を食べまくり、水をかけて頂き、「ぐああああ!!つめててえええ!気持ちいい!!」と声を出したら、なんだかもっと元気が出てきた。
ありがとうブラボーさん。
さっきまで、鉛のように重かった脚は少しだけ軽くなり、心の中にあった影はこの日の天気のように晴れ渡ってきた。
さ、折り返しまであと13km!!
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